篠山市景観まちづくりフォーラムを開催しました
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『基調講演』 東京大学 西村幸夫氏 「篠山市における景観法によるまちづくりの可能性」
● 景観法について
・日本の町のたくさんの歴史や都市の個性を大事にしながら町づくりを行うことを可能にするのが、「景観法」(2004年)、「歴史まちづくり法」(2008年)。
・篠山は伝建地区も見事だし、周辺の農村風景も素晴らしい。あまり他にないくらい素晴らしい景色であり、「景観法」や「歴史まちづくり法」は篠山市のためにあるような法律。
・「景観法」は魅力的なまちを磨いて、よりいっそう魅力的にするための法律であり、現状の素晴らしい景観を維持していくためにもこの法律によるコントロールが必要。
● 篠山市の景観について
・軒先で道行く人に話しかける人がいる景色は素晴らしい。
・自分の家の前を花を飾ったりして大事にしている。こういう景色が町なかにどんどん増えてきている。
・城下町というのは武家屋敷、町人町、お城で構成されているが、日本の約200の城下町のうち武家屋敷と町人町の両方残っているのは20ほどと少ない。武家屋敷は敷地が広いので宅地開発されたり、公共施設になったりしてなかなかそのまま残らない。町人地、町屋、武家地、お濠が残る篠山の城下町の景色は珍しい。
・この町の武家屋敷の特色として、農家のスタイルが武家地に取り入れられていることがあげられる。農家の建物のスタイルが武家の中で洗練され、町の中の住み方としてうまくアレンジしていった。
・社会は車から歩く時代に変化している。篠山は歴史を感じさせる道など、人間スケールの町が、そのまま残っている。
・住んでいる人は当たり前に思うかもしれないが、山と農地の境が見事なすばらしい農村風景がある。
・かやぶきの住宅がいくつも残っており、絵に描いたような風景。阪神間から1時間圏内で来れる所でこのような景色が残っているのは奇跡的。ある程度時間的なバリアがあることで、その地の良さが分かる人だけに来てもらうことができる。
・篠山の景観まちづくりは、かなりのことはできており、今の景観を損なわないようにして、うまく磨けば素晴らしいまちになる。
● 他市町の事例
【山づとの道】
・福岡市から約1時間ほどの郊外にある今すごく元気のいい町。筑後川流域のゆるやかな斜面地にある小さな農道が「山づとの道」。その景色の良さから、この場所にアーティストが集い、農家の人たちが農家工房を作っておもしろい農作物や加工品を作っている。
・次の時代への魅力を持つこの町には、大都市からのいい距離感と素晴らしい景色を兼ね備えており、これを今の景観法により大事にしようとしている。
【近江八幡市】
・川端前市長時代に日本で最初に景観法を使った景観計画を作った市。
・20〜30年くらい前、農家の人たちにとって管理が非常に不便になってきた近江八幡濠を埋め立てようという動きが起こった時に川端前市長は濠を守るために闘った。農家の人たちに「(今の)この景色が大事か、(埋め立てて)便利になった景色が大事か、今、これを映像に撮って50年後の子孫に問うて欲しい」と訴え、濠の埋め立てを阻止した。そこに住む人の生活とのバランスの中で、大切なもの、守るべきものは何であるかを考えた。
・景観計画における規制の部分はそこに住んでいる人たちには受け入れられにくい。しかし、今、人間の感覚というのは変わってきており、古い伝統的な建物が大切にされ始め、規制を含む景観計画が市民に受け入れられるようになった。
【愛知県岡崎市】
・戦災に遭って古い建物があまりない中で、徳川家康の菩提寺である大樹寺の門から見える岡崎城の景色は守られ続けている。景色が変わってしまった所でも、一つの眺望だけを手がかりに、景色が守られている事例。
【石川県】
・重要な白山の眺望の場所がいくらかあり、石川県はその眺望を守るために景観法により白山の景色を守る取り組みを行っている。
【石川県加賀市大聖寺】
・お城近くの道が河原町や御徒町で整備されるのに併せ、道周辺の赤瓦の建物を大事にする取り組みが住民を中心として起きている。この住民団体のチェックを受けなければ建築確認申請も提出できなくなっている。
・「歴まちセンター大聖寺」という住民のNPO団体による大聖寺川での船のツアーが実施されたり、また、空き地を民間で買い取り、「景観広場」を作ってその景色を守る取り組みが住民主体に実施されている。
【鹿児島市】
・県庁からの桜島の眺望を守るために鹿児島市は11億円でマンション建設予定地を購入。この11億円の投資が適正かどうか議論となる。
・鹿児島県のアンケート結果より、この町で守るべき景色は「城山の上」からの桜島の眺望であり、住民にとってそれは大変重要であった。錦紅湾に浮かぶ桜島の眺望を守るため、市は景観法による高さ規制を行った。景観法の制定により、合法的にみんなが共有する大事な景色(景観利益)を守ることが可能となった。
【広島市】
・原爆により歴史的建物はほとんどなくなってしまったが、市内を流れる川を大事にする取り組みを始めた。川沿いを表側と捉えて整備した。
・看板をなくす取り組みも行われた。特に川沿いは強化され、原爆平和記念公園から見える所には現在看板は全くない。あった物をなくす努力というのは無くなってしまうとなかなか分からないが、その努力を知ることにより、その景色がいかに大事かが初めて分かる。
● 篠山市の景観まちづくりについて
・一見当たり前に見える景色が、実は見えない努力により魅力的になってきているという町が増えてきている。そういう町は建物一つ一つが変に自己主張せず、調和がとれている。そこにある風景を磨いて魅力ある町づくりに取り組むことが大事。
・篠山には魅力ある風景が山のようにある。この風景を磨き、誇りを持って、「どうだ羨ましいだろう」というぐらいの、全国モデルになるような景観を活かしたまちづくりを是非やってもらいたい。
【話題提供1】 神戸大学 黒田龍二氏 「歴史的町並みの視点から」
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● 歴史的町並み保存の意義−なぜ残すのか
・町並みの保存において重要なのは、見た目の美しい偽物ではなく、本物を残すことである。ひと・まち・地域のアイデンティティを資料として未来に残すことが大切。
・変化しない歴史資料が歴史叙述の基礎資料であり、その基礎資料を残すことで、将来どういう風に学問が変化しても、認識を正すことができる。歴史的町並みの保存の意義とは、自分たちのアイデンティティを持つために必要な、無限の情報を持つ宝庫である歴史資料を直接資料として保存することである。
● 何をどこまで保存すべきか
・何を残すかはできる範囲と方法で、「景観」、「建築形態」、「生活文化」を保存すべき。これらの保存が無理ならば、少なくとも記録だけは保存する必要がある。
・どこまで保存すべきかは、いろいろな考え方がある。最低限、構造体を残し、可能なら瓦や建具も残せればよいが、原則足し算の改装で、結論として強いて言えば、全部残した方がよい。歴史を重視して保存すべき。
【話題提供2】 京都大学 神吉紀世子氏 「田園農地の視点から」
テーマ「景観を守ることに直結する強い農業を作る」
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● 宇和島市の漁村「遊子水荷浦の段畑」の事例
・平成19年7年26日、文化財保護法に基づく重要文化的景観として全国4号目の指定。もともと漁業中心であるが、山の斜面に農地を開墾。その希少価値が認識され保存活動を展開。景観計画を作成し、重要文化的景観の登録に至る。
・この急傾斜畑を守る力の源の一つが、たいへん美味な馬鈴薯の生産適地であること。「景観を守ることに直結する強い農業」が存在することは重要で、農地に適する栽培種もしくは管理方法などを追求し、保存の労力負担に見合うやり甲斐を見出せ、結果の出る農業があることと、もう一つは、農作業(管理作業)に対する支援体制の確立があげられる。
・農山村の文化的景観を持続するシステムとは、自然に合わせて農家や林業家が働きかけることで良好な関係を作り、その結果として良い生産物も景観も成長するシステム。
● 高野山周辺集落の文化的景観の事例
・高野山の近くの山地のてっぺんにある盆地と斜面地の2箇所の集落を中心に生き物調査を実施することにより、農地景観について検証。平地と斜面地では農業の手法に違いがあり、この違いこそがそれぞれの植生や生き物環境を維持するには重要であることが判る。
・地域の自然環境に合わせた農業を行うことで景観が守られている。農地山林の景観の中に保全作業などを上手く位置付け、景観を持続できる仕組みを作る。つまり、文化的景観を持続する実施システムとして、農林業などの維持管理作業を持続するためのいろんなタイプの仕組みを「発明」していくことが大事になる。
● 篠山の農地景観
・谷筋の奥に集落が見えて手前から開放的空間があるという空間構成の中には、見た目以上に生き物や農業のやり方の知恵を感じる。開放的空間の生き物の相や谷地形の生き物の相はおそらく異なる。立地が似ていても個々の農地の事情により適する植生も違う。地元の方が今まで以上に活き活きと農業に取り組めるような景観計画を作成し、全国のモデルになるよう頑張って欲しいし、期待している。
【パネルディスカッション】
◇ コーディネーター 西村幸夫 氏 (東京大学大学院教授)
◆ パネリスト 黒田龍二 氏 (神戸大学大学院准教授)
神吉紀世子 氏 (京都大学大学院准教授)
金野幸雄 (篠山市副市長)
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◇西村
・強い農業と多様な生態系とそれの管理、これらと農業との係わりが非常に重要とのことだが、空き家増加の問題などは今の話にどのように絡むのか。また、具体的にはどのように対処できるのか。
◆神吉
・農村における空家の増加は農業後継者の不足にも関係している。農村の景観を守ろうとするとやはり新しい後継者がほしい。後継者自身に活躍の場がある地域、たとえば、まちづくり活動や若い人たちのグループ活動があるなど、地域づくりに熱心で自身の役割を見出しやすい地域には後継者は来ると思う。後継者は最初から多人数をと考えず、市全体で年数をかけて100人、ここ数年で10数人増やすなど、具体的人数のイメージを戦略的に組み立てるほうが考えやすく具体策も練りやすい。
◇西村
・二人のプレゼンテーションを聞かれ、これから景観法を活かしたまちづくりを進めていこうと言う立場で、副市長の感想をお聞きしたい。
◆金野
・築城400年祭を開催中の篠山には、キーワードがある。一つ目はこれだけ篠山には本物があるのだから大事にしようということで「本物」。二つ目は我々が日々生活をして生きているということで「暮らし」。先生方の生活・文化と言う言葉と同じ。篠山の農村景観の美しさは周りの暮らしへの遠慮に拠る。町並みに合わないような目を引く建物は建てない、そういう暮らし方をされている。普段から自然と日々の暮らしの中で地域を美しくすることが、篠山の人には既に身に付いている。篠山の風景はなぜ美しいか?それは、暮らしっぷりが美しいから。この暮らしぶりをどう維持していくかを考えないといけない。
・眺望景観についてあまり議論されておらず、制度化されていない。篠山でも、「この眺めは確保したい」というポイントがあると思うが、ポイントの設定について市民の声や意識を反映させる手法は?
◇西村
・一度アンケートを取られたら直ぐに出てくるのではないか。建物は所有者がOKしてくれないとだめだが、「眺め」はみんなのものなので、みんながいいじゃないかと言えばルール化しやすい。現在、眺望を守っているのは全国30都市ぐらいあり増えている。ひとつの大きな流れである。
◆金野
・空き家を再生する上で、本物としての保存と復元すると暮らしにくいことのジレンマを感じており、記録していくこととの兼ね合いをどの辺で折り合いをつけたら良いのか伺いたい。
篠山の農業は一定強いが、これで生活できるほど儲かるような強い農業にはなっていない。景観の議論をすると暮らしそのものに直結する。そこで、文化的景観の指定をするための要件と言うようなものがあるのであればお聞かせ願いたい。
◇西村
・黒田先生に保存と活用について、その後に神吉先生に重要文化的景観についてお答えいただきたい。
◆黒田
・生活していくことが第一義。構造体を残していただいたら中は全面改装になってしまっても仕方がない。価値観はせめぎ合いをするという考え方を持っていれば、どこまで残すか、自ずと妥協点は見えてくるはず。多くの場合、座敷と仏壇あたりが家の象徴として残ってくる。行政や専門家と記録の残し方などを考えれば良い。
・他の地域から人間を呼び込む際には篠山の篠山らしさを理解して住まわせてやってるんだぞと言う気概で行き、おもねることはない。京都の人間が来ようと神戸の人間が来ようと、週に一回しか来ないとしても篠山の人間として馴染んで篠山化してしまうと言う考え方が必要。
◆神吉
・特色が何でどのエリアをどのように残そうと思っているか、「本物論」に耐える内容であるということが必要。要件としては景観計画があることがまず第1義。景観計画が策定されていれば様々なまちづくりの方法を考えられる可能性がある。また、今はまだ景観のための森林計画は殆ど事例がなく難しい。林業や里山は農地以上に支援システムがなく、保存義務などが課せられたら更に大変ということでなかなか進まない。篠山市は森を守ってきた経験があるし、森林の文化的景観の守り方のモデルケースを何か篠山で出されたら日本で最初になると思う。景観計画ができればそのうえでいろいろ試してみてはいかがかと思う。
◇西村
・重要文化的景観は景観計画の中にこういうところが重要な文化的景観ではないかと記すだけでよい。現在、重要伝統的建造物群保存地区と重要文化的景観を持ってるのは、近江八幡だけだと思う。両方ふたつずつぐらいあれば日本最大となるので、是非がんばっていただきたい。
・会場から質問を募集すると20通以上来て大変関心が高いと思う。中に、「景観やるなら市民の意識改革が必要じゃないか」、「こう言う風情を残すためには住民の理解が必要になるので、そのための手段がいるのではないか」、「理解と誇りが大事だろう」。という意見も寄せられている。
◆金野
・我々がお節介にも地域に入り、篠山の景観の素晴らしさをお伝えしてもなかなか理解いただけないところがある。市民にとっては当たり前になっている。意識改革と言うのは、開発推進の方の意識改革と、篠山の環境の素晴らしさに気づいていない方の意識改革とを分けて考える必要がある。
◇西村
・会場からの意見で、市内の男性の方から、「住みよく便利になることと風景を守るっていうことが上手く繋がるっていうことはあり得るわけですよね。それはあまり矛盾したものだと考えないで正におっしゃったように、暮らしそのものの中に知恵があると言うことですよね。」もうひとつは、市外の女性から「『いい景観』というのは誰にとって『いい』のか。住んでいる人なのか外の人なのかそれは対立するのか。それからもう一つは、景観と言ったときにも、川とか空気の感じとか時間の流れとか、もう少し視覚以外のものもあるんじゃないか。こういうものをどう評価したら良いのか。」どなたかどうでしょうか。
◆神吉
・景観における「いい」の解釈は様々。地域や個々の住民の事情が違うのだから解釈が多様なのは当然だと思う。その中で将来に向け取り組みを持続させる可能性を考えたときに多様な意見のなかでどのように折り合いをつけるのかを、色々な可能性を含んで考えればいいと思う。
◇西村
・ひとつだけとは限らないということですよね。
◆神吉
・今こうして次世代に渡せば、更にまちづくりが繋がる可能性が高くなるのではないかと考えることが必要。
◆黒田
・一言で言うと、私の場合非常に単純でとりあえず「古いもの」はいい。今まで続いてきた昔からあるものはいいので、それをできるだけ持続させる。どうしても現在社会に馴染まない、あるいは社会問題がある部分は変えていかないといけないが、基本は、日本の日本らしさと言うものを残していこうとする意図の基に開かれている。
◇西村
・ここまで残ってきたわけだから、それにはそれなりの理由がある。
・副市長に沢山の質問が来ている。「今やろうとしている景観施策とはどういうものか」というもので、たとえば「旧町(旧篠山町)だけじゃ景観駄目なんじゃないか」、「やるんだったらもうちょっときちんとアンケートとか地元の声をとってほしい」、「具体的に規制の方法はどんなふうになるのか」、「特に広告物とか今既にある建物に対してどんなことをやろうと考えているのか」、「既に県の条例などがあるわけだけれども、具体的に市が主体的にできることとはどんなものなのか」、今、具体的に動こうとしている景観施策に関しての細かい質問について詳しく説明願いたい。
◆金野
・「旧町だけ」とは「旧篠山町」を指しているかと思うが、景観計画は篠山市全域を対象に作成する。
・それぞれの地域性を考慮し、市域全部を対象として市民と議論していきたい。オープンな議論を行いながら景観計画を進めていきたいので、市民の方からは積極的にご意見をいただきたい。
・景観に関しては現在、屋外広告物も含め、多くを県の条例に頼り、色々な制度による運用を行っているところを、市が景観法を導入することで、ルールが一元化され、法的な担保力も高まる。篠山市が主体性を持って、独自の景観施策に取り組むことがでるようになる。
・「景観は『視覚』以外にもあるのでは」というご意見について、「景観」とは五感を以って感じるものである思う。
◇西村
・紹介できなかったが、「経済的な手段、経済活動、ちゃんと暮らせることと両立させなければいけない。小売業の問題でもある。人口の流出や市の財政がピンチ。これらもきちんと考えてほしい。」、「観光とかなりきちんとマッチした計画を立ててほしい。特に武家屋敷などでは移築や見学できるところとか、サイクリングとか、楽しくいろんな人にプレゼンテーションできるようなことも考えてほしい。」、「もう景観って言うのは古いんじゃないのか、これは悪い意味でなくて、篠山ではそういうのはそれぞれもう揃っているんじゃないのかと、自然の資源も歴史の資源も人材的な資源もあるんで、もう次のレベルに行くべきではないかと思う。それは世界に向くと言うことだ。世界に売り込むために何が魅力かということは、外国の人に聞くとかなりのことが出てくるんじゃないかと。そういうかなり広い戦略を持って考えるべきではないか。」という意見があった。本当にたくさんの意見が出て、後半のパネルディスカッション終了まで多くの参加者が熱心に聞かれていた。
◆篠山市景観まちづくりフォーラムの概要(PDF版)◆
◆篠山市広報 平成21年8月号(景観まちづくりフォーラム開催しました)◆
◆フォーラム開催のお知らせ(終了しました)◆
◆篠山市広報 平成21年7月号(景観まちづくりフォーラム開催します)◆