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愛宕(あたご)さんの火縄  ■真南条上

其の8●愛宕(あたご)さんの火縄  ■真南条上

 真南条(まなんじょう)の龍蔵寺(りゅうぞうじ)というお寺の奥の奥に、愛宕(あたご)さんのお山があります。
 そこには、昔から、火の神様が住んでいるということでした。この神様は、火事になると「はよ火を消してえな。」と願(がん)をかけるとその願いを聞いてもらえるというありがたい神様でした。
 しかし、3年の間には「願(がん)すまし」をしなければならないことになっていたそうです。
 ある日、権兵衛(ごんべい)さんの家が火事になりました。
 権兵衛さんは、「あたごさん、はよ火を消してえな。消えたら願すましをしますので。」と、一心に祈りますと、ぴたりと火が消えたのです。
 それから何事もなく3年の月日が経(た)ちました。ある日、またも権兵衛さんの家から火が出たのです。その時になって「願すまし」をしていないことを思い出した権兵衛さんは、「今度は忘れずに願すましをしますので、はよ火を消してえな。」と謝(あやま)りました。そして、今度も火は消え助かりました。
 それから、また、4年目の晩、権兵衛さんは、ふっと願掛け(がんかけ)のことを思い出しました。
「すっかり忘れとったわな。はよ今から願すましに行ってこな。」と愛宕さんのお山へ登ることにしました。
 途中で、たばこが吸いたくなった権兵衛さんは、あまり急いで来たものですから、火打ち石(ひうちいし)を持ってくるのを忘れたことに気が付きました。懐(ふところ)にも袂(たもと)にもありません。困っていますと、フッと目の前の闇(やみ)の中から小さな火が近づいてくるではありませんか。びっくりしている権兵衛さんの前に現れたのは、火縄(ひなわ)を持ったお坊さまでした。
「お坊さん、よい所で逢いました。ちょっとたばこの火を貸してくださいな。」と権兵衛さんが頼みますと、「この火は貸されへん、これから権兵衛の家を焼きに行く火やからな。」と言われるではありませんか。腰も抜かさんばかりに驚く権兵衛に、「いくら苦しい時の神頼みというても、あれではな。」と言われます。
「私が悪うございました。どうかお許しください。私もそのことに気が付き、今、願すましに行くところです。何とかこらえてもらえまへんやろか、お願いします。」
男は、涙を流さんばかりにお願いしました。
 しばらく考え込んでいたお坊さまは、「それなら、早くお詣(まい)りしてこい。そしたら棟(むね)だけ焼いてこらえてやる。」と言い残して、すたすたと山を降りて行きました。
 権兵衛さんは、山をかけ登り、愛宕さんにお詣りし、石段を降りかけますと、村の方から勢いよく火の手が上がったかと思うと、すぐに暗くなりました。
 走りに走って家へ帰ってみますと、山の中で出会ったお坊さまの言われるように、家は棟だけ焼けておりました。
 まるで夢のような出来事に、あのお坊さまは“あたごさん”だったのだと気付き、それからの権兵衛さんは、きっちりと約束を守るようになったということやそうな。
 今でも真南条では、産まれた赤ちゃんをつれて「愛宕さん」へお詣りし、「やけどをしませんように。」とお守りを頂いているそうです。