1997年9月号

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伝統が生きるデカンショのまち
篠山町ホームページのアドレスは
  http://www.hk.sun-ip.or.jp/sasayama/

丹波篠山に 本物の味覚を求めて…

   丹波黒大豆が取り持つ縁で始められた都市と農村交流
 篠山の人と土にふれあい 今年で5年目
   息の長いおつきあいが今も続く コープ神戸・消費者の皆さん

初夏の植え付け時期に 手にとってみた黒豆の苗
よちよち歩きの赤ん坊のように か弱くいとしさが感じられる
慣れない手つきでていねいな定植 ホッと自然に笑みがほころぶ

安心 安全 信頼のブランド「篠山特産」 秋本番が待ち遠しい
(1)
篠山町黒大豆枝豆ブランド化座談会

これでええんか 丹波篠山の特産!
 今月号では、「これでええんか、丹波篠山の特産」と題して、丹波黒大豆を中心に、現在の篠山の農業が抱えている「特産ブランド」化への課題に焦点をあてた「座談会」の模様を紹介しています。生産者と消費者、流通・販売・観光などそれぞれの立場にある方々から率直に自由な討論が交わされましたが、読者の皆さんはどのように感じられるでしょうか…。
皆さんのご意見・ご感想をぜひお寄せください。



山内(コーディネーター 篠山町農林課長)


篠山の特産は全国的にも大きな評価を得ています。これは昭和五十年代初めから転作が始まり、転作を逆手にとった特産振興を図るという農協の提案もありまして、現在の名声を得るに至ったといえます。ところが、丹波黒大豆の枝豆はおいしいと聞く反面、ちょっとまずいとか、高すぎるという声が町に入ってきます。一つには本黒の枝豆と「早生種」のものが混同して市場に出ているということからです。とにかく篠山の枝豆が人気を落とすということは、黒大豆そのものに悪いイメージを与えかねません。その対策について今後どうすればよいのか、それぞれの立場から率直な提言をいただいて、町民の皆さんにも現状をご理解いただく中で、特産振興に取り組みたいと考えています。
特産振興の原点に返って




西尾昭(篠山観光協会長)


ふだん私が、観光客あるいは京阪神の方々との交流の中で聞く特産品は、知名度から言えば「篠山の黒豆」ということが中心となっています。篠山ブランドということでは、松茸・栗となんかも質的にはいいんですが、量的に、消費者需要にこたえることはできない状況ですので、それに代わる特産品ということで黒大豆に着目され今日に至った成果は篠山の大きな財産だと考えています。
山内


小田垣さん続いてどうでしょうか。

小田垣博三(篠山町商工会長)


私は、昭和五十五年ぐらいから十月ごろになれば「今年の作柄はこんなんですよ」と黒豆の枝豆を問屋さんなりお客さんに何カ所か見本的に届けていました。その折に、「何とかこの枝豆を商品化したら…」という話がありまして、初めてのことでもあり、当時、農協や市場での働きかけをしましたが、まだまだ無理だということでした。それでもやっぱり需要があるということで、単独で登録商標「黒さや」という名前で売り出したのが昭和五十九年でした。以後、十年少々でこんなにも大型商品になっているんです。
売れる期間というのは皆さんご存じのとおり、せいぜい早くとも十月五日で、篠山のお祭りごろが実も太って特においしい時期です。通常十日から十五日間ぐらいが限度です。もちろん、時期をはずれて、まったく違う品種のものもたくさん出ていますが、厳密にいう本来の丹波の黒豆で売るのならこの時期以外は無理です。別の品種で北海道産や青森産などを丹波の地で作って出回ってはいますが、やっぱり旬の味に徹底して、本物を売るという原点を大事にしないと、将来には続いていかないと思うのです。
山内


市場ではいかがですか

小林忠夫(株式会社篠山魚市場社長)


私は鮮魚が担当ですので詳しくはお話しできないかも知れませんが、現在、「白(早生)の枝豆」が五百cから一 にくくって出荷されています。あくまでも私が値をつけるのではなくて、仲買人さんがいろいろと商品を見て、値段をつけているのです。観光客が篠山の枝豆や土産物を買って持ち帰られることについては、そのときに「この豆は高いけれども粒はそろっています。どうですか」と説明して納得のうえで買ってもらうのが一番いいのではないかと思います。
生産者名と確かな品質表示を
山内


仲買人という立場からはいかがでしょうか。


出野勇(篠山魚市場仲買人組合代表)


この前、観光協会だったと思いますが、やはり「早生の枝豆」の話が出まして、「できるだけ作らんとこ。売らんとこ」という話です。早速私も生産者にお願いしていますが、生産者からは「十年も十五年も前からくれくれと言っておいて、急に今年はいらんと、そんないい加減なことでは困る」とおしかりを受けています。
また同業者には「できるだけ自重しよう」と話をしますと、「お前のとこは止めたらええ、私とこでは売る」というようにどっちつかずの話になります。先ほど、小林さんが言われたように、市場では早生の黒豆は早生黒とか「タンクロウという商標で出回っています。早生でも黒豆ということをメインにして他の特産品をできるだけ売りたいということでもあります。
山内


久下さん、いつもは篠山の観光案内で観光客と接しておられて、黒大豆について何かお気づきのことがありますか。


久下享(ディスカバーささやまグループ会員)


黒豆のシ―ズンは十月十日が「味まつり」ですので、その一週間前後が黒豆の旬ですよと説明をします。二十五日になってからも買って帰る人がいますけれども、私は努めて黒豆の旬をPRしています。
ある新聞社のトップ記事で、氷上郡六町で「早生黒豆」を商品化して阪神間へ出荷しようという記事が載っていましたが、これを見て、丹波篠山の黒豆はどうするのかというのが問題点だろうと思うのですが…。
山内


梶村さんは生産者の立場ですが、実際に作られているのは「本黒」だけですか?


梶村善親(篠山町農業協同組合黒大豆部会長)


早生種「鳳鳴」をわずかですが作っています。皆さんからきびしい話を聞かせていただいたんですが、消費者の方々から品質が悪い、値段が高い、旬を過ぎているのではないかという苦情が出されていることはよく分かります。今後、それらに対してどう対応するかを率直に考えているところです。
ここ二、三年で転作面積は、二百三十町か二百四十町の栽培面積が三百町ほどに増えてきました。他産地が追いつけ追い越せと迫っています。それだけに生産者の立場からは、商店の方などに大いに売っていただきたいと思っています。
 品種表示とともに信用のためにも、薬剤散布は、「鳳鳴」の品種は八月の下旬まで、「丹波黒」は九月の上旬までという指導があります。安全で安心できるものとして出荷するため、農薬残留のチェックや、散布時期を徹底することが必要だと思います。
山内


小島さんは青空市場でがんばっておられますが、生産組合などでも実績をもたれている立場からいかがでしょうか。

小島啄弥(篠山町農業生産組合協議会長)


私は「丹波黒の枝豆」を商品として出荷し始めたのが昭和六十一年ぐらいでした。そのころに比べると価格的にはちょうど今が倍です。
丹波黒の枝豆の旬というのは、種をまく時期や気候などによりますが、十月五日から遅くとも二十五日ぐらいがおいしい時期と考えてもいいだろうと思います。たとえば、一 の束をちゃんと作り、その作られた束からさやの重量がいくら出てくるのか。昨年の場合三十束で、五八〇cが下限で、七二〇cが上限でした。平均六三〇cとなり、ちょうどこれが「味まつり」のころです。「丹波黒」本場の旬の時期を大事にして、徹底したブランド化を進めるためには、「鳳鳴」などの早生は作らないということと、さらに土づくりにより、高品質な枝豆生産が大切です。
枝豆の旬を表示してPRも…
山内 貴重なご意見をいただいていますが、JA(農協)生産部の西井さんとしては、この早生種「鳳鳴」の扱いについてどのようにお考えでしょうか。

西井功(JA篠山生産部長)


昭和六十三年に「ホロンピア・食と緑の博覧会」が開催されたのを契機に枝豆の耕作面積も増え、平成八年度は三五、五ヘクタールになりました。平成元年からは約三倍に増えています。平成八年度では「鳳鳴」の出荷が一五トンです。「丹波黒」の出荷が五五トンで、合計約七〇トンでした。平成九年度は、「鳳鳴」の出荷をできるだけ押さえていこうということで、現在出荷の予約をいただいているのが七トンです。「丹波黒」の旬の枝豆を予約いただいているのは約六三トン。総量としては昨年と同じ七〇トンです。
篠山町農協が「鳳鳴」を導入したのは、十月五日よりもう少し早い時期に枝豆がほしいという京阪神の要望を受けたためでした。ところが、やはり丹波篠山の黒豆・旬の味へのこだわりが強く、当然努めねばならない本来の使命から、来年は「鳳鳴」の品種は、篠山町農協では取り扱わないという方向で「集落座談会」の席上で組合員皆さんにお願いしてきました。ただ、もう少し早い時期にほしいという量販店だけの要望にこたえるために取り扱いをしている訳です。
それと、農協量販施設「特産館ささやま」に来られた観光客の方から、他所で非常に高い枝豆を買わされたという声を聞きました。十二月に採れる黒豆はそんなに価格変動がないのに枝豆がどうして一千円以上になるのかと疑問に思った訳です。今、早生の品種を止めなければ、兵庫県下の他産地でもたくさんの枝豆が市場に出回っていますので、このままでいくと、せっかく有名な「丹波の黒豆」が他産地に押されていくような危機感を感じています。
 農協としては、今年から特産館の一番目につくところに、旬の時期(「鳳鳴」を含めて)を表示することにしています。そして枝豆一つひとつに生産者名・ブランド(品種)名のラベルをつけてこれが本場篠山の枝豆ですよと強調したく思っています。
おいしすぎる丹波黒の枝豆
*
小田垣


「早生黒」であれ「タンクロウ鳳鳴」であっても、東北地方の枝豆に比べると確かにおいしいんですよ。まして中国産・冷凍の枝豆に比べると、早生黒」でもおいしいのです。ところが、これらに比べてさらにおいしすぎるのが十月の本物の黒豆なんです。

村上


「本黒」はこんな品種ですよと、きちっと品質表示をしてお客さんに納得して買っていただくのが親切ですね。

山内


往々にして、混同して買っておられますね。

村上


「鳳鳴」は遅くて十月十日までの出荷となるし、「本黒」の出荷は、十月一日からですので、十日間のあいだに「鳳鳴」と「本黒」の出回る時期が重なってしまい、「本黒」だと思って買って帰った人からの苦情が出てくるのではないかと思うのです。昨年の三月の時点で、生産者の方にアンケート調査をいたしましたら、約七割の方が苦情を聞いているという結果が出ていました。

山内


実際に「本黒(=丹波黒大豆の枝豆)」の味を味わってもらおうと思ったら、他の品種は一切作らない方がいいのではないかという意見。
ところが、本場・篠山へと観光客がたくさん来られている中で、「本黒」の枝豆が出回るまで、これに代わるものを味わってもらおうという考え方もあって早生種が出回り、ブランド化を進めるのにむずかしい問題があるのです。
そこでたとえば、生産者の名前を表示して農家の顔が見えるようにすべきであるとか、農協では今年から特産館の前などに「旬の味」を知らせる看板を出したい意向が述べられました。何か「本物」を売ることで取り組めそうな気もするのですが…。
ブランドかを進めるために
山内

 そこで、当面これだけはということを皆さんから提言いただければうれしく思います。


小林


生産者から持ち込まれる商品に対しては、商品番号・生産者の氏名・電話番号・品種を明記していただくことを強く言ってきていますが、まだまだ徹底していないのでさらに徹底したいと思っています。
 市場には、毎日六十人ほどの仲買人さんが来ます。中には商品に対して何の品種か知っていない場合もあります。信用ある店で買いたいとする需要がある以上、商品に対する理解を持ってもらうように強く言いたいとも思っています。

小田垣


市場での競りは、良いものは高いという当然の制度です。商品価値によって値がつけられますので、生産者の皆さんにはぜひとも自信の持てる立派な商品を出してくださいとお願いしたいですね。それと、余りにも悪いものは競らないでほしいということですね。

小林


悪いものは競らないでほしいということですが、市場としては、持ち込まれた商品に対して「よう売りません」とは言えないことになっています。生産者が一生懸命作られたものを持ち込まれている訳ですから、一応競りにかけて、たとえ十円でも二十円でも値をつけなければならない仕組みなのです。

西尾


市場関係では、品物の上下があって価格で評価されます。JAでも経済担当の人がチェックされている訳ですから、せめて秀品・優品・良品というものを扱うところまで徹底しなければ枝豆としての価値がないのでは。やっぱり価格差も大切です。

山内


皆さんそれぞれの立場で貴重なご意見をいただきました。最後に「ブランド化」を進めていくためにどうすればということでお聞かせください。出野早生を売りたいと言っているのではありませんが、今年の場合はもうすでに売っています。ですから商品には「丹波黒大豆」の表示はしていません。とりあえず一束一束の商品には、「これは本黒とは違います」という表示をつけるようにしたいと思っています。
農協枝豆部会に期待を
西井


農協としても、できる限り本黒以外の枝豆は作らない方向で農家の方々に協力いただいて、ブランド化を進めていきたい。規格をきっちりとチェックして消費者には安心願える販売体制と、農協の「枝豆部会」といった組織を整えて、きっちりとした栽培体系のもとでなされる出荷体制を作りたいと思っています。

小島


「枝豆部会」の組織活動により、黒大豆栽培農家のほ場チェックが必要ではないかと思います。たとえば、「このほ場は、十日ごろから十五日ぐらいが一番旬ですね」などとアドバイスする現地指導体制があれば、枝豆の統一もできるのではないでしょうか

梶村


生産者の責任と商店など小売業の方の責任をはっきりしていただくような体制づくりをお願いしたい。
本場の味に真心を込めて…
丹波篠山味まつり

開催日 10月10日〜12日

西尾


丹波黒と、その枝豆、黒豆の若さやをチェックする機関「枝豆部会」での徹底を期待したい。
篠山町内では周辺他地域の黒豆の枝豆も売られています。ですから、丹波農協など横の連携も考えなくてはなりません。
ブランド化ということが篠山単独のものなのか、丹波広域を指すのかはっきりさせる必要もあります。
それと、春から夏にかけての商品開発は、ぜひとも必要です。特産品という意味では農家が作られてこそ意味がありますので、農家と商売人が一緒に考えていかなければならないと思うのです。

西井


十月には、篠山だけでなく多紀郡が本物の「丹波の黒豆」の枝豆だとPRを徹底したい。農家の皆さんは作業も含めてたくさんの課題を抱えています。しかし、お話のありましたように、品種改良あるいは品種選びをしながら、早生の枝豆に代わるものの開発に努力していきたいと思います。


村上


チェック機能のことについては、一定の基準を設けた新たな規格づくりをお互い検討しあう必要があると思います。山内今まで農業といいますと、農協、普及センターを中心にした話し合いでしたが、こうして商工関係の方にも入っていただいて、特に黒大豆の枝豆のブランド化のためにどうしたらいいのかという意見交換ができ、大変有意義であったと思います。
今年の「丹波篠山味まつり」は、十月十日、十一日、十二日です。この日には大勢のお客さんがお越しになりますが、本場「篠山の味」を十分に味わっていただくために、町民あげて責任あるものを真心込めて提供していくよう努めたいものです。
去る七月五日、第十五回篠山町農業振興大会が行われ、生活協同組合コープこうべ・赤木正実さんと篠山農業改良普及センター・森本秀樹さんのそれぞれの立場から提言された要旨を紹介します。
提言1

消費市場から見た篠山特産


生活協同組合神戸・赤木正実さん

「ささやま」と聞くだけで丹波黒大豆は、テレビの「美味しんぼ」でも紹介されたように全国的に有名です。ところが「高くても売れればよい」と言って売れる間はいいんですけれど、いつかは売れなくなるでしょうね。多分、篠山から全国に向けてギフトが送られていると思います。けれども、いろんな産地が膨大にふくれあがった時に、必ずギフトも頭打ちとなるときがやってきます。
根本的に味の違いがあれば別ですが、ここと同じとか、年に1回しか食べないという人にとって味を比べることは非常にむずかしいのです。
特に、黒豆の枝豆は九州管内のあちこちで増えつつあります。四国の方でも膨大な土地で増えているという情報を得ています。他に作る作物がないんですね。将来はなおさら、販売の経路を将来的に隔離するというところがこれからの大きな課題となるでしょう。そのためにも、条件提示がいります。価格なのか、格段にうまいものなのか、ブランドがいつまでも続くものなのかなど、非常にむずかしい部分があります。
篠山の黒大豆はこうだという主張やこの数でどうだとか、どういう方法でやるかなど、5年先10年先に向かって計画し実効を上げていこうとするなら、他社、他産地が入り込んでも、どんな競争にも負けないという決死の覚悟がいると思うのです。
提言2

篠山特産の現状と課題


篠山農業改良普及・森本秀樹さん
黒大豆は立枯性病害の多発や年々収量が上がりにくくなっており、今年は特に発芽が悪く苦労されています。
特産地の技術で大切なことは、産地になればなるほど常に原点に戻り、基本技術を忠実に守ることだと思います。その中から新しい技術を取り入れていくことも必要かと思います。原点に戻るとは、篠山のイメージがあるからどんなものでも作れば売れるとか、丹波黒は高いから早生の枝豆をどんどん売るとかではないはずです。ブランドとは「銘柄」であり、「商標」のことで、一生懸命苦労されて作りあげられた皆さんの「顔」なのです。
残念ですが、昨年、篠山町内で購入された早生枝豆に対し、多くの苦情の電話や手紙がありました。実際、篠山町まで来られて丹波黒だと思い買って帰られた方が「篠山で買えば本場の黒豆だと思ったのにまずかった」とわざわざ手紙まで送られてきているのです。これでは、せっかく積み上げてきたブランドも一瞬のうちに崩れてしまいます。本当に求められているものを生産、販売していくことがこれからの時代に求められています。高い高速代やガソリン代を払って、わざわざ篠山町まで来られるのは、篠山に本当の「モノ」があり、作りあげてきた篠山の風土と皆さんの人間性を求めてのことではないでしょうか。今一度原点に!