認定新規就農者 大阪 剛さん

大阪 剛(おおさか つよし)さん(37 歳)
 
自然農法にこだわって、安心安全な米を届けたい
 
 
現住所 篠山市福井
経営品目 水稲(アサヒ)47a、黒大豆36a、野菜17a
経営面積 104a
運営組織・体制 個人(1 人、農繁期のみ手伝いの人にお願いする)

 

 

 
 
食の安全について考えるきっかけになった、原発の事故
 
―就農のきっかけを教えてください。
大阪府出身です。20 歳までは豊中に住んでいて、そのあと、茨木、吹田、箕面と府内を転々としつつ、仕事はずっと建築の内装の職人をしていました。
具体的に「農業をしよう」と思い立ったきっかけは、2011 年の原発事故なんです。あの地震の当日、京都にいて、その晩に仕事でシンガポールへ行かなあかんかった。地震があったというのはうっすら知りながら、でも詳しいことを知らないまま。仕事は、日本のゼネコンが監理している現場での職人への技術指導ですね。最初2 週間で帰れるって話だったんですけど、丸1 か月くらいは向こうにおったかな。もう毎日、ホテルと現場の往復でした。
だから、地震や原発事故のニュースはシンガポールで見たんです。向こうでもすごい騒ぎだったですからね。英語のニュースで分かる単語を見ながら、あとは映像で状況を知っていきました。そして帰ってきたら、日本で報道していることと海外での報道のギャップにびっくりして。
海外の報道はストレート。でも日本の報道は、何かを隠しながらやっているように見えてしまってね。「ニュースが信じられへんなぁ」と、自分でいろいろ調べ出して…そこから食に興味が出てきたんです。その前までは食や農業には全然興味なかった。スーパーへ行ったら「あるものを買う」くらいで、こだわりもなかったんです。でも、知っていくうちに自分で作りたいなと思うようになりました。夫婦ともども、趣味がアウトドア方面ではあったんですが、その時までは、農業には関心がなかったんです。
 
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景色もよくて、大阪・京都からのアクセスも良い。そんな篠山市福井が気に入って移住を決めたという。
 
実際に引っ越してきたのが、2015 年2 月、4 年前ですね。そろそろ仕事も独立しようかな(会社を辞めようかな)という年齢で、義父母との同居、ひとり目の子どもの誕生、といろいろ重なった時期でもありました。それまではぼんやり考えていた「農業をする」という方向性を叶えるなら、今かな、と思ったんですね。仕事を辞める、(それまで住んでいた持ち)家は売らなあかん、義理の両親と同居する、こっちの家は購入する…全部のおっきい決断をしなくちゃいけないタイミングが、いっぺんに来ました。だからその時はしんどかったです(笑)。でもたぶんね、「もう今やらな、もう(農業)せえへんな」と思ったんですよ。「これが5 年先、10 年先やったらよう動かんようになるな」と。
物件を探すときの条件は、自分の実家も嫁さんの兄弟が住んでいる京都方面も近い、同居できるくらいの大きな家がある、景色がよい、農業が盛ん…といくつかありました。そこで、田舎暮らし専門の不動産屋さんを回って、京丹波町、篠山市、丹波市あたりで探して決めました。そして、2014 年の11 月に仕事を辞めて、ここに引っ越して住み始めたんです。篠山市に住んでから、失業保険の手続きをしながらとりあえずハローワークに顔出して、一応、求人を探したりして。そう思ったらムチャクチャですね。人におすすめはできないですね
(笑)。
 
結果的に、そのハローワークで「アグリヘルシーファーム(※1)」さんの求人を見つけて、当日すぐに面接へ行って、すぐに働き始めることができました。
そして2015 年3 月から2018 年3 月までの3 年間、社員として働かせてもらえました。全く農業をしたことがなかったんで、この3年間は本当に貴重で勉強になりましたね。いまでも機械を借りたり、農繁期にはアルバイトに行かせてもらったりと、まだまだお世話になっています。
 
 
 
安全な米・野菜を届けるための自然農法
 
―現在作られている品目とこだわりのポイントをお教えください。
今年(2018 年春)から、本格的に自分の畑での農業を始めました。こだわりは「農薬や除草剤、化学肥料ナシ・自然農法で米や野菜を作ること」ですね。
例えば、畜産堆肥も使わず、緑肥を使っています。自分が農業をやろうと思った「根本」がここなんで、絶対に譲れないところですね。
育てているのも、人工交配させていないお米「朝日」-これはコシヒカリの祖先みたいな品種ですが-や、固定種(在来種)の野菜です。
自分の米や野菜の作り方を信用して買うてくれている人がいるんで、これは本当に外せないこだわりです。僕の想いとしては、子育て世代の親に買ってほしいんです。でもこんなやり方でやっているから、スーパーで買うよりやっぱり高くなってしまう。米なんてやっても儲からへんでとは言われるんですけど。
でも僕の想いとしては安全な「主食=米」をいろいろな人たちに届けたいと思って、(農業を)始めているので。
 
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今年、お米を育てた畑には、緑肥が入っていた。時期が来たらこれを畑にすき込むという。
 
 
 
農業を軸とした生活を送るのが今後の目標
 
―今後の展望について教えてください。
僕の(農業の)やり方でやっていったら、たぶん機械があってもで3ha くらいが限度だとも思うんですけど、それでもぼちぼち農機もそろえて、農地も増やしていきたいですね。将来的には、自分の農業を軸にしながら、(集落営農をしている)地域の農業、アグリヘルシーファームさんの農業の手伝いもしつつ
…農業主体の生活が出来たらそれが理想かなと思っていますけど。
 
 
―農業分野における丹波篠山の『価値』について教えてください。
丹波篠山ブランドといっても、篠山市自体を知らん人も結構おるんでね。「篠山市ってどこ?」って、よく言われましたわ。近畿圏の人でも大阪の人でもそんなんだったから。
ただ、単純にここで作った米はうまい。それは伝えています。篠山市の中でもここらで食べる米がいちばんうまいと僕も思います。水がいいからちゃうかな、と思うんですけどね。これまで、市内各地の圃場で収穫されたいろんなお米を食べましたけど、やっぱりここで取れた米はうまいです。
 
 
「農業をしたい」気持ちを現実化できるのは、自分の覚悟次第
 
―新規就農を目指す人にメッセージをお願いします
農業をしていると、喜びも苦しみもいろいろあります。例えば喜びで言えば、預かっている農地の地権者の人に「ありがとう」といわれることかな。最初は理解できなかった。なんでありがとうと言われるのか。いまは何となくわかりますけどね。苦しみで言えば、夏場の草刈りですかね。除草剤を使わないので、草の処理が本当に大変。そして、毎回、ひと作業ごとに一発勝負のギャンブルという緊張感もあります。芽が出ても病気になったり、この前みたいな台風とか…言い出したらキリがないですね。不安もあるし、楽しみもある。その両方です。
自分は村用もガンガン出るし、消防団員もしましたし。そういう機会があると、村の人といろんな話ができますから本当に良かったと思っています。この地域(福井)は、かなりオープンな地域ですね。移住者なのに逆にそういうところ(消防団など)に「受け入れてくれた」んやな、と思うしね。ホンマに良くしてくれていますよ。やっぱり移住してくるんだったらその地域に染まって、いろいろ身体を動かさないと、やりたいこと(農業)もできへんやろうしね。
 
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「地域に染まって身体を動かすこと」。新規就農成功の秘訣をそう教えてくれた大阪さん。
 
もし「移住したいな」という気持ちを持っているんだったら、それをあきらめるのはもったいないです。いや、家あるし、家族あるし、とか。いや、そんなん、みんなあるから。言い訳にせんと、想いがあるなら来たらええやん、とは思いますけどね。まぁ、今は、移住してきたいという人の相談窓口みたいなのになれたらいいな、と僕は思っています。自分自身、知り合いがひとりもいない場所に引っ越してきて苦労もしたので、少しでも助けになれたらいいですね。
ただ、都会から来ようと思ったら、覚悟ないと無理ですよね。本当に、覚悟決めるのは本人しかできひんから。ふわっとした気持ちでは無理。覚悟決めんと無理、やと思います。
そして、将来独立したいの人も、絶対、どこかでまずは農業を経験した方がいいですよね。農業経験なくて独立したいんやという人は特に。アルバイトでもいいから、絶対にその方がいい。機械も道具もただで触らせてもらえますしね。とにかく、「農業をする」ってのは、“ふわっとのんびりスローライフ”というのとは、違いますから。
 
※01:アグリヘルシーファーム:農事組合法人アグリヘルシーファーム(篠山市味間奥)のこと。
(2018 年12 月)
 
 

 大阪 剛さん インタビュー(PDF:462KB)

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